本研究の目的は、知的発達障害児とその家族を支援する地域の力、コミュニティレジリエンスを育成し、そのプロセスと促進する要因の検討である。研究方法はA町をブイールドとしCommunity-based Participatory Researchを用いた。平成21年~22年度は発達障害児とその家族のための地域支援システムの実態と課題の検討、平成23年~24年度はその課題への介入と評価である。平成22年度は地域支援システムの利用者である発達障害児の母親7名、発達支援に関わる小学校教諭4名、保育士3名等を対象に半構成的インタビューの実施、及び療育教室等の参加により、地域支援システムの問題点についてデータを収集した。 A町の地域支援システムは、保健センターでの発達障害児の早期発見、幼児園の二次療育教室での早期療育、医療機関での診断告知、及び小学校におけるサポートで構成。早期療育は、「子どもの療育成果の実感」「子どものしんどさの理解」と位置づけられる一方で、「偏見でみられることへの戸惑い」が発達障害児の母親から抽出された。また、医療機関での診断告知においては、診断告知による「精神的落ち込み」だけでなく、「子育てのプレッシャー」「夫婦の子育てトラブル」と言った家族の葛藤が示された。地域支援システムの連携では、「教育と医療の連携」、「教職員全体での支援の必要性」が保育士や小学校教諭から抽出、また、発達支援による「子どもの育ちの共有」が抽出された。これ等をKey Informant Groupで検討、今後の課題として(1)発達障害の行動特性を理解して関わる教職員集団づくり(2)子どもの発達支援と並行した家族支援(3)発達障害の正しい理解と啓蒙の3点を挙げた。*Key Informant Groupは、発達障害児の母親、特別支援コーディネーター、保育士、保健師、児童精神科医、作業療法士、研究者による構成。
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