研究概要 |
本研究は、日本・韓国・中国の3カ国の中で、介護の社会化において、家族機能(家族凝集性)と老親扶養意識が介護の社会化の意識に及ぼす影響の類似性と差異性の問題を、日本・中国・韓国の3カ国の世代間(大学生と親)のデータを基礎に検討することを目的とした。 日本・中国・韓国の各2大学の学生とその親を対象に質問紙調査を実施した。親への調査は大学生を経由して質問紙の配布を依頼し調査した。本年度は、3カ国での調査を実施し、データに不備のあった中国の1大学については再度調査を実施した。 調査内容は(1)基本属性(性、年齢、同胞数、出生順位、家族員数、出身地域)、(2)家族凝集性、(3)老親扶養意識、(4)介護の社会化の意識、看取られたい場所、(5)健康関連QOLについて調査した。 分析は因果モデルを構成し、構造方程式モデリングを用いて分析した。 結果、日本、中国、韓国ともに家族凝集性は老親扶養意識を介して,介護の社会化の意識に関連するとする因果モデルは統計学的に支持された。日本の老親扶養意識は大学生、親ともに他の2国に比べ最も低く,介護の社会化の意識は最も高い。日本の親は家族凝集性と手段的扶養意識、介護の社会化の意識のいずれにも関連は無かったが,情緒的扶養意識と介護の社会化の意識とは負の関連が認め、情緒的扶養意識の低さは介護の社会化の意識を高めた。韓国の親では家族凝集性に手段的、情緒的扶養意識は関連し、情緒的扶養意識と介護の社会化の意識とは負の関連を認めたが、手段的扶養意識と介護の社会化の意識とは直接的な関連はなかった。中国では大学生、親ともに家族凝集性は手段的、情緒的扶養意識に関連するが、介護の社会化の意識には直接的な関連はなかった。 介護の社会化の意識は日本が最も高く、手段的扶養意識は特に低い.これらの結果は公的な介護保険制度の整備状況に関連することが示唆された。結果は学会発表と学術論文として成果を発表した。
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