研究概要 |
本研究は、日本・韓国・中国の3カ国の中で、介護の社会化において、家族機能(家族凝集性)と老親扶養意識が介護の社会化の意識に及ぼす影響の類似性と差異性の問題を、日本・中国・韓国の3カ国の世代間(大学生と親)のデータを基礎に検討することを目的とした。 結果,家族凝集性が手段的及び情緒的扶養意識を介して介護意識の社会化に影響すると仮定した因果関係モデルは実証できた.3カ国の中で介護の社会化の制度が最も早く導入された日本の親の老親扶養意識が最も低く,介護意識の社会化は高い.逆に介護意識の社会化は,介護の社会制度の整備されていない中国が最も低い.さらに,介護意識の社会化への家族凝集と老親扶養意識の影響に関しては,高齢者介護の社会制度が整備した国ほど弱くなる. 結論として「社会的側面として高齢者介護の社会制度が整備されるほど,介護意識の社会化は強く,個人的側面としての家族内資源である家族凝集性と老親扶養意識の介護意識の社会化に及ぼす影響は弱くなる」ことを明らかにした. 以上のことから,介護意識の社会化は社会環境の変化と家庭・個人が保有する資源の減少と相まって進展していくものと推察できる.家族凝集性の低下が介護負担感を高める,また高齢者虐待の要因として家族関係の不和があるといった先行研究の成果を踏まえると,家族内資源を保ちつつ介護意識が社会化されることが重要となる.したがって,高齢者介護が社会的資源に偏重せず,良い家族関係性を維持できるよう家族の介護力の過不足を見極めたケアプランの立案や家族介護者への心理的サポート,新たな介護役割が加わることによる介護者の生活の再構成を支援するシステムの整備といった家族支援が今後の課題であると考える.
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