初年度、大分県内の1事業所で質問紙調査を行い、夜勤時の眠気は、1)主観的健康感や朝型といった個人特性、2)仕事のコントロール度や達成感といった職場環境要因、及び3)昼間の睡眠前の「寝酒」「カフェイン摂取を控える」「入浴」などの生活習慣と関連していることが示された。 そこで、3)の生活習慣を改善する教育プログラムが夜勤時の眠気を軽減するかどうかを検討するために、今年度は介入研究の準備に取りかかった。生活習慣改善プログラムの内容には、上記の生活習慣と関係深い就寝時刻や食事の時刻・内容なども加える必要がある。そこで、包括的な「交替勤務者のための睡眠教育テキスト」を試作するとともに、生活習慣を確実に実行するための補助用具として快眠日誌を作成した。 これらを用いた睡眠教育を大規模に展開する前に、岡山県内の小規模事業所において、この教育プログラムと効果の検証方法のフィージビリティを検討した。職場内の睡眠研修会に交替勤務者約50名が参加し、うち25名が質問紙調査に応じた。さらに19名が2カ月後の再調査にも応じた。このうち睡眠日誌を使ったのは4名で、残る15名は2度の質問紙調査のみに協力した。このように質問紙調査及び睡眠日誌使用の協力率は高くなかったが、この2ヶ月間に東日本大震災があり、当該事業所もその間接影響を受けたことが、協力率を下げた可能性もある。この事業所では、事業所内産業保健スタッフが常駐していなかったが、同スタッフによる参加者への動機付け・促しが協力率を引き上げる可能性もある。参加者の生活習慣、不眠症状、夜勤時の眠気は、参加者数が少ないため統計的に有意とは言えないものの、概ね好ましい方向に変化しており、教育的介入の効果が示唆された。 次年度(最終年度)さらに規模を広げて介入研究を行うために、大分県内の別企業(交替勤務者約500人)での調査研究について、事業所と交渉を開始した。
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