研究者のこれまでの研究結果では、ADLが自立している高齢者の転倒発生には、視知覚と姿勢制御の関連性が示唆されている。この2つの要因に下肢筋力と柔軟性、特に下肢の柔軟性との関連性を重ね合わせることで、転倒の身体的要因の明確化をねらい、転倒予防対策への足がかりを作ることが本研究の性格である。 ヒトが二足立位歩行を始めたときから、転倒という現象に向き合うことが余儀なくされ、それとともに下肢筋力とバランス能力の強化が要求されることになった。本研究では、過去の研究でも用いてきた簡易で簡便な下肢筋力測定装置を用い、地域で生活をしている身体的ADLが自立している高齢者を対象に、視知覚、姿勢制御、下肢筋力の3要素に柔軟性を加えた調査を実施した。 22年度は、限定した人数の高齢者を中心としたデータ収集を実施し、視知覚と姿勢制御と下肢筋力、柔軟性の4者について検討をした。分析結果から、視覚的刺激が強く、かつ下肢筋力と柔軟性が低値であるほど姿勢制御は不安定(重心動揺が大きくなる)になる傾向が認められた。しかし、ごく少数の高齢者での試験的要素が濃厚な調査であったため、次年度では、研究対象者数を増やし、データの信頼度や妥当性を確認するとともに、視知覚、姿勢制御、下肢筋力、柔軟性についての因果関係を追究し、転倒予防策につながるべく研究を目指す。
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