研究概要 |
健康な青年期の人々を対象に身体活動量,糖尿病の知識および予防的保健行動を測定し,介入群にはある程度の脅威感を与えることで行動変容を促すとされる防護動機理論に基づき,糖尿病の合併症を強調した健康教育を実施し,その介入の効果の検証を行なうことを目的とした。 看護系大学の1年生119名を対象とし、無作為に介入群と対照群に分類した。介入前に両群に身体活動量の測定,糖尿病の知識および保健的予防行動について質問紙調査を実施した。介入群には,糖尿病の合併症について3回の健康教育を実施した。(1)糖尿病の知識:平成19年国民健康・栄養調査で実施された「糖尿病に関する知識」の質問項目を用い得点化した。(2)予防的保健行動:宗像の作成した予防的保健行動尺度を用い,得点化した。(3)身体活動量:スズケンのライフコーダーEXを1週間装着してもらい,歩数,運動量,総消費量を測定した。119名のうち同意を得られた60名を研究対象とし,そのうちすべての項目に回答の得られた50名を分析対象とした。介入群25名,対照群25名であった。(1)糖尿病の知識:健康教育前後の変化量は,介入群が2.2点±1.8点,対照群は0.6±1.8点であり,介入群で有意に得点が上昇した(t=3.09,p<0.01)。(2)予防的保健行動:健康教育前後の変化量は介入群が1.4±3.1点,対照群は0.8±2.4点増加したが有意差はなかった。(3)身体活動量:介入群では身体活動量が増加したが、対照群では身体活動量が減少した。健康教育を実施した介入群では対照群に比較して糖尿病の知識,身体活動量が増加していたことから防護動機理論を活用した健康教育は青年期に対する糖尿病一次予防に効果があることが示唆された。よって今後は健康な青年期に対して継続的に健康教育を実施することが糖尿病一次予防のために必要である。
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