本研究の目的は、勤労者夫婦を対象として老親介護体験に関する聞き取り調査を行い、1)夫婦による家事介護分担や精神的支援を行う過程について明らかにすること、2)老親介護する勤労者夫婦への支援に用いる資料作成であった。本年度は、米国ワシントン大学Frances M.Lewis博士に以下の2点についてスーパーバイスを依頼した:1)老親介護を女性の規範行為として価値づける社会において、介護と就労両立を促進する教育的介入を計画する上での留意点、2)夫婦を対象に行う聞き取り調査に必要とされる技法。1)について、以下の示唆を得た:わが国の女性にとって老親介護は道徳的な価値づけを帯び、就労との両立は文化的に繊細な課題である。このことから、以下の2点の配慮が必要である:(1)介入研究においては対象の話しやすさを考慮し夫婦個別に実施すること、(2)対象の行動変容を促す場合、口頭説明による指導ではなく対象自ら代替手段を創造するような参加型モデルによるアプローチが望ましい。これらを踏まえた上で、Releasing from the oppression : Caregiving for the elderly parents of Japanese working womenの題目でQualitative Health Research誌に報告した。2)について以下の4つの示唆を得た:(1)最初に妻対象、(2)次に夫対象、(3)最後に夫婦揃って実施すること、比較対象として、(4)独身の男性介護者へも調査することが望ましい。
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