1.研究目的 A.国内外の緩和ケアエキスパート・家族に対するナラティヴ・インタビューを実施し、さらにフィールドワークによる患者観察を行うことによりデータを収集する。それらのデータから「がんと認知症をともに持つ高齢者・家族の緩和ケア評価指標に必要な要素」を構造化する。 B.がんと共に生きる認知症高齢者・家族・ケア提供者の倫理的問題の論点整理を行い、「がんとともに生きる認知症高齢者・家族に対する緩和ケア評価指標」に必要な倫理的要素を構造化する。 C.AとBをもとに、「がんと認知症をともに持つ高齢者・家族の緩和ケア評価指標」の試案を開発し、モデル病棟によるエキスパートパネルを実施する。 2.研究の成果 国内外のエキスパートインタビュー、遺族インタビュー、高齢者施設での参加観察、文献検討等の結果を統合し、エキスパートパネル・検討を繰り返し、「がんと認知症をともにもつ高齢者・家族に対する緩和ケア評価指標」の試案の開発という本研究の成果となる指標を作成することができた。本指標は(1)信頼関係となるコミュニケーション、(2)個人史をふまえた対象理解、(3)がんと認知症を踏まえた全人的ヘルスアセスメントと安楽の提供、(4)倫理的検討をふまえた看護ケア、(5)家族(重要他者)を含めた看護ケア、(6)患者・家族が安心できる場づくり、(7)多職種によるチーム・アプローチ、という7っのモジュールから成るケアの要素を、「構造」「過程」「アウトカム」の側面から、療養の場・病期別に、対象となる「認知症とがんをともに持つ高齢者」「家族」「医療・介護チーム」を評価するというものである。本研究の一部を用いて緩和ケアの関連教材・図書の執筆も進めることができた。
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