研究概要 |
本研究は精神科看護師の質向上の一端を担う、身体合併症ケア能力強化を重視した看護技術習得のための実践プログラム開発を最終的な目標として研究を行うものである。本年度はまず、身体合併症ケアの臨床判断における困難さについて分析を行った。その結果、〈患者の特性〉〈フィジカルアセスメント能力の不足〉〈「いつもの患者」との相違を察する臨床判断の難しさ〉〈精神科特有のエビデンス〉〈看護師の心理的障壁〉〈施設の設備に関する問題〉があげられた。また,身体合併症ケアに重要な方略として〈信頼関係の構築〉〈実践知から得られたスキル〉〈五感を働かせた患者理解〉〈危機回避への対応〉〈スタッフ間の情報共有〉を日常的に積み重ねることが必要不可欠であることが明らかとなった。実践知から得られたスキルと五感を働かせることによって,身体合併症の早期発見を行い,危機回避への対応を常に心がけている臨床判断のプロセスが明らかとなった。 次に、看護師の目標達成行動(NPGA)を測定し属性との関連について調査を行った。その結果、NPGA総得点の平均は145点(SD25.9)であった。亀岡らによると一般病棟の看護師は149.4点(SD:20.4)であり、本研究との大差はみられなかった。NPGAの全項目中、自分自身の行動の中で「劣っている」と評価した人数が最も多かった項目は「患者の急変に対し冷静かつ迅速に必要な処置をとる」24.5%、「患者の身体的状態の変化や苦痛を見逃すことなく機敏に対応する」20%であった。いずれも下位尺度1【自律的判断・行動と患者自身の目標達成手段実施への支援】であった。つまり、専門的知識・技能・態度を駆使した看護過程展開を網羅した実践プログラムの構築が、行動の質向上に効果的であることが示唆された。
|