研究概要 |
今年度は以下の3つの目的について研究を行った。目的1は佐賀と関西のTHA患者で術前の調査票を回収できた対象者合計591名に、術後1年後にQOLの郵送調査を行った。術後調査の回収は70%で、術前に比べ、術後1年では、The Euro qol (EQ-5D)、Short Form-8 (SF-8)、Oxford hip scoreの全てが有意に改善した(p=0.000)。地域特性別の比較では、佐賀の対象者の方が改善率が高く、その理由については原疾患の違いや他関節障害の影響が示唆された。TKA患者についても、同様のQOL調査を開始し、今年度は術前68名を回収できた。目的2はTHA術後患者の在宅訪問調査により、生活上の困難さおよび生活上の対処について調査を行った。同意が得られた対象は術後患者6名で術後6か月と1~2年の2回にわたり、在宅環境の個別性や生活上の工夫を面接調査と動画で撮影し、動作分析を行った。個別の家屋や居住環境の他、社会的役割により活動パターンに相違があった。今後は、具体的な生活動作支援を検討する。目的3は、THA患者33名を対象に、アクティグラフを用いて、手術前後の睡眠・覚醒パターンを把握し、さらに調査票により睡眠満足感を調査した。本調査の結果、総睡眠時間は手術前356,7分,手術後259.5分で手術後の中途覚醒の増加により最長の睡眠時間は手術前149.3分から手術後86.3分と減少し(p<0.05)、断続的に短い睡眠を繰り返している手術後の睡眠パターンが明らかになった。また、主観的な睡眠満足感も低下し、睡眠の量・質ともに悪化した。さらに、術後1日目にストレスホルモンとして、血中アドレナリンとコルチゾールを測定したが、術後の睡眠障害にはコルチゾールが関連していた。
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