研究概要 |
今年度は以下の3つの目的について研究を行った。目的1:THA(人工股関節)患者のQOLと生活行動について、主観的評価と身体所見との関連を比較した。術前と退院後一か月、術後1年、3年の4回の調査全てに回答した651名を分析対象者とし、QOL尺度はEQ-5D、WOMAC、AIMS2「気分」等で評価した。原疾患がRDCの患者は術前の疼痛が著明で、強直股やRAは術後3年のQOLの改善率が低かった。また、再置換患者は術前は両側手術患者よりQOLが高いが、術後の改善率が低く、1年後より3年後の方が低下した。就業は術後1か月では少なかったが、1年、3年では就業者の割合が多く、外出や運動を行っている人も術後期間が長いほど増加していた。目的2:THA患者の活動量とQOL評価と比較し、活動量を規定する因子を明らかにする。携帯生活行動記録機を使用した活動量測定と質問紙調査を行った。分析対象は術前と術後6カ月、1年で活動量とQOLを全て測定できた39名で、活動量については、歩数は術前に4742.6歩/日から6239.2歩/日,活動強度は1.6Mets/日から2.3Mets/日と増加していた。QOLについては,SF-8(MCS),SF-8(PCS),Euro-QOL utility score, Oxford hip scoreは全て術前より術後に大きく改善していた。活動量とQOLは術前は有意な関連を示さなかったが、術後は中等度以上の活動強度と歩数はQOLと関連を認めた。目的3:TKA患者の日常生活行動量とQOLについては、縦断的に調査を継続しており、QOL調査は101名、活動量調査は41名の術前と術後6カ月のデータを回収した。平均年齢は75歳と高齢者が多く、生活環境や活動量には個人差が大きいため、日常生活動作援助は個別的な支援が必要である。
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