21年度に引き続き、地域在住の高齢者の毛髪中亜鉛濃度と体調や食生活の現状を把握し、高齢者自身が食生活について考え実行することで介護予防につながることを目的として調査を行った。 22年度の調査は21年度に引き続き協力を得た高齢者に食生活の傾向や、体調の自覚的症候の有無、毛髪中亜鉛濃度の測定を行った。21年度調査後に毛髪中ミネラル濃度の計測結果を返却し、毛髪中濃度は即時的な結果でないが、食事の習慣性を考える指標として参考にしてほしい旨を伝えた。また、実施に際しては本学倫理審査会の承認済みである。 調査協力は2年連続で男性14名、女性40名の54名であった。男性は平均年齢76.4±4.6歳、女性は74.4±6.2歳であった。BMIは男性22.5±2.5、女性22.5±2.5であり、年次の差はなかったが体重が平均0.6kg減少傾向であった。自覚症候では男性は、21年度は一人平均3.4個であったのが22年度は1.9個であった。女性は、21年度は一人平均4.5個の自覚症候が22年度は2.8個と減少しており、自覚的症候数は男性(p=0.0028)女性(p=0.0054)ともに前年度と有意差を認めた。 毛髪中亜鉛濃度は21年度214768.25ng/dl、22年度は147691.25ng/dlであり低下傾向であったが統計的差はなかった。毛髪中亜鉛濃度が2年連続で基準以下は7名であり、亜鉛欠乏に関連する自覚的症候の気分が落ち込みやすい、気持ちがついていかない、口内炎ができやすいことを自覚していた。しかし7名中5名は食事が美味しいと述べており、食事摂取量も普通からやや多いと自覚していた。BMIでも普通、肥満であり、体重増減も1kgの範囲であった。亜鉛欠乏の特徴的な味覚障害の自覚的な症候は見られなかった。調査時期が10月以降であり、これらの結果は22年度の猛暑も大きく影響している。猛暑による影響が、体調管理を意識した自己管理意識の高さとつながり、自覚的症候数が減少したといえる。ただし、食生活による影響の亜鉛は減少傾向であり、食事摂取内容の変化も猛暑により生じていたといえる。2年連続で毛髪中亜鉛濃度が基準以下の7名の味覚に関しては、味覚変化が徐々に生じた結果、味覚障害を意識していない可能性もあり、今年度の継続課題である。
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