地域在住の高齢者に毛髪中亜鉛濃度と体調や食生活の現状を把握し、高齢者自身が食生活について考え実行することで介護予防につながることを目的として3年間の継続調査を行った。 3年目の調査は特に初年度毛髪中亜鉛濃度が基準以下であった女性高齢者に焦点をあてて調査を行った。方法は地域で老人クラブなどの活動に参加し、自立した生活を送っている高齢者に食生活意識ならびに自覚的症候の有無に関する自記式アンケート用紙への記載と毛髪中亜鉛濃度の測定を行った。初年度ならびに2年目に毛髪調査結果を返却し、食生活への改善を促した高齢者である。3年目の調査協力は初年度に毛髪中亜鉛濃度が基準以下の16名と2年目に極端な低下傾向を認めた2名を含む18名であった。平均年齢は76.6±6.6歳であり、BMIは22.7±3.0であった。BMIは前年度より低下していた。食生活の優先度では初年度はバランスよく、2年目は野菜を多くとる、3年目は和食中心に変化していた。自覚的症候では腰痛が3年連続して多く、3年目では膝痛も同数であった。亜鉛欠乏に関連する症状については食欲不振、口内炎、気持ちがついていかない、脱毛、風邪を引きやすいなど年度間の差はないが、いずれも2~3名は症候を自覚していた。毛髪中亜鉛濃度では2年目に極端な低下を示した2名は改善し、他の16名中10名はわずかであるが増加傾向を示した。毛髪中亜鉛濃度は初年度と2年目(p=0.0315)、2年目と3年目(p=0.316)で有意差を認めた。これは2010年の猛暑による影響が食生活に及び低下したものと考える。高齢者は調査結果をとおして、食生活について考える機会になった13名、食生活に気をつけた13名、不足している食品を取り入れた11名であった。調査により一時的に食生活が変化したのが13名で、食生活は簡単には変化しないとも9名が回答していた。毛髪中亜鉛濃度の変化を認めなかった6名中5名は、食生活に変化がなかったと述べていた。食生活を通しての介護予防は定期的に食生活を意識する機会を提供し、食生活の変化を確認できる検査の結果や体調を評価する機会をつくることが必要である。
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