介護老人福祉施設において認知症高齢者の事前意思を尊重した終末期ケアの看護の構成要素を抽出することを目的に、聞き取り調査を実施した。全国の施設から、地区別に区分し選定し、同意の得られた25施設の看護管理者を対象に、研究者が各施設に出向き面接を行った。面接の聴取内容は、施設の体制、終末期ケアの施設の方針、看取り指針作成状況とその内容、「認知症高齢者に良い終末期ケアができたと感じている事例」についてである。終末期ケアの事例については、対象者の概要、経過、ケアの実際を時系列に具体的に聴取した。面接時間は90~120分であった。 語られた事例においては終末期ケアに関する、認知症高齢者が事前に表明した希望と家族の希望は一致しているという特徴があった。各事例において、認知症高齢者の意思は何らかの形(常日頃の言葉や行動、書き物、宗教など)でケア提供者によって日々把握されてケアが行われていた.また、看護管理者達は、認知症高齢者の日常生活上の意思表示は、表情や行動(うなずき、心地よい顔つき、拒否、拒否を示すしぐさ)により、かなり末期まで可能であると捉えていた.その一方で、介護老人福祉施設においては、入所者の認知機能障害の重度化が進みつつあり、入所時点から既に、まとまった事柄(終末期に過ごす場所、入院、延命治療の希望など)に関する意思確認が困難なケースが増えてきているという現実が明らかになった。これらから、介護老人福祉施設における終末期ケア体制とケア内容の充実は極めて重要であることが確認された。同時に、認知症高齢者の終末期ケアの事前意思確認は、入所相談の時点から意識的に把握する、入所前のサービス施設と連携する必要性が示唆された。
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