研究概要 |
1. 目的:平成22年度はうつ病者と統合失調症者の家族を対象に,平成21年度に開発した「うつ病者家族の困難性尺度」を活用し,それぞれの家族が日常生活上経験する困難な出来事の特徴を明らかにすることと,測定用具としての「うつ病者家族の困難性尺度」の疾患特異性を検討することを目的とした. 2. 研究方法:1)調査対象者の条件:DSM-IVによりうつ病性障害と診断された人の同居家族,および統合失調症と診断された人の同居家族2)募集方法:施設責任者に研究の趣旨および方法を文書と口頭により説明を行い,研究協力が頂けた場合,「うつ病者家族の困難性尺度」,研究の趣旨および方法・倫理的配慮について記載した文書,切手貼付ずみ返信用封筒の3点を配布した.3)調査期間:20XX年X月から20XX+2年X+3月であった.本調査では無記名で回収し,返信をもって研究への了解を得たと判断した.なお,本調査は奈良県立医科大学医の倫理委員会の承認を得ている.(承認番号300) 3. 結果:9施設から協力を得て,223部配布し,90部の返信回答があった.回収率は40.35%であった.1)質問項目による比較:12項目のうち,「ご本人が眠れないと訴え,夜間不眠がちである」や「ご本人がイライラしたり,焦燥感がある」の2項目はうつ病者家族が統合失調症者家族に比べて有意に高い値を示した.「ご家族がイライラする」,「ご家族が一条生活において今までのいように意欲がわない」の2項目では統合失調症者家族がうつ病者家族に比べて高い傾向にあった.2)各因子得点による比較:うつ病者家族は統合失調症者家族に比べてすべての因子において高い傾向にあった.特に【機能不全】である第III因子では有意な差が認められた.4. 結論:夜間不眠や焦燥感はうつ病者家族が経験する固有の困難な出来事であることが明らかとなった,また「うつ病者家族の困難性尺」はうつ病に対する疾患特異性を備えていることが推測された.
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