研究概要 |
研究目的:本研究はうつ病者家族を対象とした心理教育プログラムの有用性を評価することを目的とした.研究方法:対象者の募集では療養学習支援センターのホームページ及びパンフレット,近隣市町村の広報誌へのプログラムの紹介を通して参加者の募集を行った. 対象者の基準は(1)DSM-IVで,うつ病性障害であると診断された方のご家族(2)家族の年齢・性別,疾患の経過は問わない(3)うつ病を持つ方と同居している人(配偶者,主に診察に一緒に参加している家族)(4)入院・外来は問わない. プログラムの目的及び内容,実施期間は,うつ病者家族が日常生活上経験する困難な出来事を軽減,改善することを目的とし,(1)うつ病・治療・経過・活用可能な社会資源についての情報提供,(2)プロセスレコードを活用した相互作用の見直し,(3)家族同士あるは家族と医療者との連帯を基本構造としている.プログラムは2週間に1回で2時間程度,計6回,およそ3カ月の期間を要する. 評価方法及び評価時期はGHQ-28,FAD,「うつ病者家族の困難性尺度」3因子12項目を用い,プログラム第1回目と終了時に実施した.うつ病に対する家族の認識や相互作用の変化についてはプロセスレコードや家族から表出される言動による評価した. 結果:「うつ病者家族の困難性尺度」の比較では,「うつ病の症状と家族への影響」,「依存と訴え」及び「機能不全」,「うつ病者家族の困難性尺度」の総得点における平均得点は低下した,特に「うつ病の症状と家族への影響」では有意な減少がみられた.FADの比較では,FADを構成する7つの下位尺度のうち,「全般的な機能」及び「感情表出」を除いて平均得点は低下した,特に「コミュニケーション」においては有意な減少がみられた.続いて,GHQ-28の比較では下位尺度である「うつ傾向」において減少傾向にあった.考察:うつ病者家族を対象とした心理教育プログラムはうつ病者家族が日常生活上経験する困難な出来事を軽減することができたと考えられる.
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