研究概要 |
介護保険施設人所高齢者の日常生活行動にある「発話」と摂食・嚥下機能との関連を実証するための予備調査として、要介護高齢者に対して摂食・嚥下機能を簡易に測定できる方法を検討した。反復唾液嚥下テスト(RSST)で正常かつ認知機能が正常であり、研究参加同意が得られた被験者は、5名(年齢82.4±7.8歳)であった。「RSST3回目積算時間」、「口腔内水分量<舌上>」、「口腔内水分量<頬粘膜>」、「口唇閉鎖力」、「咬合力」、「咀嚼力」、「オーラルティアドコキネシス<パ>」、「オーラルディアドコキネシス<タ>」、「オーラルディアドコキネシス<カ>」、「ピークフロー」の計10種の検査を10日間の同時間で測定した。調査期間中、「咀嚼力」と「咬合力」の検査には拒否がみられたためこの調査を除外し、さらに2名は体調不良で9日間の調査になり、計8種の検査に対する各検査48回測定データを分析対象とした。 5名毎に各検査の変動係数を算出した後、各検査の変動係数の平均値を算出した。また、各検査相互のPearsonの積率相関係数を算出し、さらにRSST3回目の積算時間を従属変数に、他の検査を独立変数として、ステップワイズ法を用いて重回帰分析を行った。 変動係数の結果、口腔内水分量<頬粘膜>は0.04、口腔内水分量<舌上>は0.05で誤差が生じにくく、RSST3回目積算時間は0.28で高値であることから誤差が生じやすい検査であることが明らかになった。また、RSST3回目の積算時間は、ピークフロー、口腔内水分量<舌上>および口腔内水分量<頬粘膜>の3変数を独立変数とする有意な回帰式が得られた。[Y=43.139-0.025_<x1>-1.96_<x2>+1.088_<x3>(x1:ピークフロー,x2:口腔内水分量<頬粘膜>x3:口腔内水分量<舌上>)、F=8.316,P=0.000]。その寄与率は、36%(R=0.602)であり、推定値の標準誤差は、4.41秒であった。つまり、ピークフロー、口腔内水分量<頬粘膜>、口腔内水分量<舌上>で、RSST3回目の積算時間の36%が説明できた。
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