本研究は、介護保険施設入所高齢者の「発話」と摂食・嚥下機能の関連を実証することを目的としている。 1.介護老人保健施設入居高齢者に対するLife Reviewの心身に及ぼす影響 目的:介護老人保健施設入居高齢者に対するLife Reviewが心身に及ぼす影響を、QOL、生活行動、発話量、嚥下機能より明らかにする。方法:認知機能および嚥下機能が正常な介護老人保健施設入居高齢者9名(男性1名、女性8名、年齢72歳~94歳:平均85.1±1.9歳)を対象にLife Reviewの介入を行った。被験者一人に対して1日3時間の、Life Review介入を行なわない発話量(通常群)と、3時間のうち最後の1時間にLife Review介入を行った発話量(介入群)を各3~4回測定した。「発話」量はICレコーダーで収集した「発話」を逐語録にして単音節数をカウントした。嚥下機能は(1)反復唾液嚥下テストの1~3回目の各積算時間、(2)舌上と頬粘膜の口腔内水分量、(3)口唇閉鎖力、(4)呼気筋力、(5)オーラルドコキネシス(/pa/、/ta/、/ka/)、(6)主観的評価(「食事中のむせ」、「食事中のつかえ」、「食べこぼし」)の6項目、QOLはVisual Analogue Scal(VAS)を用いて、(1)食欲、(2)睡眠、(3)主観的幸福感、(4)主観的健康度、(5)主観的満足度、(6)毎日の気分の6項目を測定した。嚥下機能は「通常群」と「介入群」の各群において測定開始直後と終了食後の母平均の差の検定をした。QOLは測定直後において「通常群」と「介入群」の2群の母平均の差を検定した。「発話」量は、3時間に10分毎の時系列「発話」量を「通常群」と「介入群」の2群で比較した。結果:Life Reviewの介入によって、「介入群」の発話量は「通常群」の2.3倍であり、Life Review中に集中して発話量が増加した。また、「通常群」と比較して、「介入群」は有意にRSSTの2回目と3回目の積算時間が短縮し、舌上の口腔内水分量が減少した。Life Reviewの介入はQOLに影響を及ぼさなかった。
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