本研究は、3年間の行程を経て、要介護高齢者家族に対する支援のアウトカムを評価する指標のひとつとして、平成16年度~平成19年度に開発した、在宅介護を継続している家族の生活安定度を測定する尺度(家族生活安定度尺度)の実践現場における家族支援への適用可能性について検証することを目的とするものである。研究初年度にあたる本年度は、前回の調査対象地域以外、すなわち首都圏以外の地域を対象とし、本尺度の交差妥当性、併存妥当性を明らかにするとともに、再度尺度の見直しを行い、最終版尺度を完成させることを目的とした。 対象:首都圏以外の都道府県に所在する訪問看護ステーションを利用している、65歳以上の高齢者を在宅介護する家族とした。研究協力の承諾の得られた4都道府県に所在する105ヵ所の訪問看護ステーションより紹介を受け、314家族から協力を得た。 データ収集:平成22年1月~3月を調査票配布回収期間とした。調査票は家族による自記式とし、基本属性および「家族生活安定尺度」に回答を得るとともに、併存妥当性の検討のため、理論的に関連性のある既存尺度としてZarit介護負担尺度日本語版の短縮版(J-ZBI-8Y)にも同時に回答を得ることとした。 倫理的配慮:本研究は研究代表者の所属する大学の倫理審査会の承認を経て実施した。 データ分析の方法と経過:現在分析中である。回収された314家族からの調査票の内、有効回答の得られた289件を分析対象とし、(1)基本集計、項目分析、主成分分析、および探索的因子分析による因子妥当性の検討、(2)介護負担感尺度等、理論的に関連性のある既存尺度との相関による併存妥当性の検討、(3)信頼性係数α、多因子構造を前提とした信頼性係数ω算出による尺度の信頼性の検討(4)確証的因子分析による、地域間における因子構造の異同(交差妥当性)の検討を行い、最終版「家族生活安定度尺度」を決定する予定である。
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