研究概要 |
家族介護者は、介護期間に起こりうる予測できない被介護者の有事に関する不安は大きい。本研究課題としては、在宅認知症高齢者に絞り、突発事故や症状及び容態の急変しやすい疾病等について、実態調査をしたうえで、急変から緊急介入を含めた一連のリスク管理モデルの開発を目的とした。 研究実施計画では、まず在宅認知症高齢者の急変時、緊急受け入れを行う医療機関を対象に、原因病態や症状に関して実態調査を行い、その結果から緊急度別対応ランク分類を作成しプレ調査を行う。またその結果をもとに、家族介護者対応のリスク管理モデルの構築をする、3段階の実施計画を立案した。 研究成果としては、医療機関を対象にした分析では、認知症高齢者の急変の有無と基礎疾患および外来受診時(搬送時)の症状との関連性の検討において、統計学的に有意な関連を示したものは感覚機能障害であったことから、それは知覚や運動麻痺、転倒等であり、身体的な異常として、第3者からはっきりと認識できる障害や異常であることから、認知症高齢者の急変時の医療機関への速やかな受療行為に繋がりやすかったともいえる。しかし、持病など基礎疾患との有意な差は見られなかった(Kirino,2011)。次に、家族介護者側のリスク管理に関する思いについて、インタビューを重ね、質的因子探索的に分析をすることで、様々な認識の在り様が明らかとなった。<娘がいるので安心><有事の対応の認識><命の危険なら救急ヘリコプター><思うようにならないのが認知症の症状>等のカテゴリーに集約された(Matsumoto,2011)。また、<症状の出現による受診><症状の重症性の認識不足><受診後の診断名に不信感><出来得る手段で得ようとした安心感><認知症の特異性><医師への不信感>等のカテゴリーとして抽出された(Matsumoto,2011)。また、急変時対応に関する看護師側からの思いとしては、<認知症高齢者を理解する><急変するにいたった患者の状況を知りたい><患者が安心・安全に治療を受けられるよう工夫する><認知症高齢者を生活に織り込む家族を理解する><患者望む自宅へ退院できるよう協力しあう><公立病院としての責務を遂行する>等のカテゴリーが抽出された(Nagoshi,2011)。
|