本研究は在宅緩和ケアにおける「予期悲嘆への介入を含むグリーフケアシステム」を構築することを目的とする。平成21~22年度には在宅で終末期を迎える人を介護する家族の「予期悲嘆尺度」を作成し、その信頼性、妥当性を検証した。平成23年度は、作成した予期悲嘆尺度を実際に事例に実施し、臨床実践の場における尺度が使用できるかどうか7事例で検討したが、平成24年度は7事例に4事例を追加して11例によりさらに検討を重ねた。尺度得点は、看取り支援に十分経験ある看護師からの臨床評価との差異がなく、対象者に負担なく問題なく実施でき使用可能性を確認した。事例によっては看護師が見逃しやすい予期悲嘆も早期に把握でき、結果も家族への看護援助に生かせるなどの本尺度の実用可能性が示された。これら11事例の検討を元に本尺度を活用した予期悲嘆への介入プログラム作成に活かせる事項を抽出した。それは、次の3点であった。 1)尺度得点により、日常ケアでは見えにくい潜在的な「予期悲嘆が強い家族」を早期に発見し、感情を表出する場や家族関係の調整の機会を意図的につくり支援をする。 2)死別の先行不安による心労と介護の身体的負担が重なり合うため、家族が自覚していない身体的負担への援助と根底にある死別への不安の援助を同時に実施する。 3)下位尺度「お別れ準備へのスピリチュアルペイン」は看取りへの覚悟・準備状態も表しているため、関わり始めた早期にそれを把握して看取りへの援助につなげる。 次に、これらの3点を記した「予期悲嘆尺度の使い方」を作成し、これまで研究協力のあった訪問看護ステーションに研究成果を報告するとともに尺度の使用を依頼した。また、研究成果について学会および専門誌への投稿を行った。
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