研究課題
本研究の最終的な目的は、介護負担感の軽減につながる被介護者の介護者サポート行動や虚弱への適応方略などの自発的要因を明らかにすることである。これまでの研究成果から、社会的な役割を持っていること、虚弱な中でも自分にできることを行おうとする心理状態は虚弱高齢者の心理的適応とも密接にかかわっていることが示された。そこで、平成23年度は、虚弱高齢者の心理的適応と関連する(1)被介護者のサポート行動および(2)性格特性のより詳細な検討を行った。(1)については、70-79歳の地域高齢者2210名に郵送調査を行い、参加1253名のうち介護が必要であると回答した86名(男性40名、女性46名)について、精神的健康と種々の他者サポート行動との関係を検討した。その結果、「家族や友人の相談にのる」(p=.06)、「若い人にものを教えたり、助言をする」(p=.06)、「病人を見舞う」(p=.02)、「病人の看病ができる」(p=.05)、「家事や家の仕事をしている」(p=.03)、「家の周りの掃除をする」(p=.01)といった項目が精神的健康と関連していた。(2)については、地域在住の69-70歳高齢者1000名に対し面接調査を行い、うち心臓病、脳卒中、悪性腫瘍、糖尿病という重篤な慢性病のうち2つ以上に罹患している86名(男性55名、女性31名)について、精神的健康とNEO-FFIで測定された性格特性との関連を検討した。その結果、5つの性格特性のうち、外向性が高いこと(p=.001)、調和性が高いこと(p=.004)、誠実性が高いこと(p=.006)が精神的健康の高さと関連していた。外向性や調和性は対人交流への親和性からソーシャルサポートの提供を促す性格特性であり、誠実性は規則正しい生活習慣や健康行動の遂行の面から、介護場面での負担を軽減しうる性格特性であると考えられた。これらの結果から、虚弱高齢者、要介護高齢者の他者サポート行動およびそれらを促すと考えられる心理特性は被介護者の心理的適応を促し、それが介護負担軽減につながることが示唆された。
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