研究課題
21年度の研究において、パーキンソン病では、表皮内電極で誘発されるAδ線維刺激にお-ける痛み関連電位が、脳内の島や辺縁系で障害される可能性が示唆された。しかし、この痛み関連電位は、高齢者では、手指刺激では、健常であっても出現しないことが多く見られたために、22年度は、現在日常臨床で用いられている電気刺激による体性感覚誘発脳電位の応用を検討した。日常診療に使用される体性感覚誘発電位に加え、中潜時の体性感覚誘発電位を行った。中潜時体性感覚誘発電位は、高齢において良好に出現し、N20以降の後期成分を検出することができた。一方、パーキンソン病の体性感覚誘発電位後期成分は出現しにくく、この傾向は表皮内刺激電位を用いた痛み関連電位は、その出現率においてほぼ一致しており、日常臨床で使用が可能であることが明らかとなった。日常臨床で使用可能であることから、パーキンソン症候群の鑑別に有用であることが考えられ、パーキンソン病とほかのパーキンソン症候群(線条体黒質変性症、進行性格上性麻痺、皮質基底核変性症など)にこの検査を施行したところ、まだ症例数が少ないために有意差はないが、両セイの鑑別に有用である可能性が示唆されている。誘発される脳電位は、主に辺縁系から出現するため、パーキンソン病の非運動症状に深い関連があると考えられるため、さらに、この誘発電位によって得られた誘発脳電位の出現潜時と振幅と、パーキンソン病の非運動症状との関連を明らかにするため、同時に施行している自律神経検査やアンケート法による欝や幻覚などの精神症状の指標と痛みの関連電位との相関を検討している。これも、まだ症例数が少ないため有意差が出ていないが、関連があることが示唆されている。
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