研究概要 |
神経因性疼痛とされる非定型顔面痛、ヘルペス後神経痛、舌痛症は治療に抵抗するいわゆる難治性疼痛である。本研究の目的は、infraorbital nerve-chronic constriction injury model(眼窩下神経結紮モデル)(ION-CCI)による三叉神経痛モデルラットを実験的に作製し、ラット三叉神経節および顎顔面領域への疼痛関連遺伝子の相補的21塩基対二本鎖RNAをin vivoトランスフェクションし、RNA干渉効果によって、遺伝子の発現が抑制され、最終的にはラット個体の疼痛閾値が上昇し、鎮痛効果が惹起されるか否かを確認することである。作年度は三叉神経痛モデルラットを作成し、行動学的疼痛反応を引き起こすかどうか検討した。片側の眼窩下神経結紮ラットで、フォンフライ毛による機械的刺激を用いた顔面逃避反射閾値の測定を両側前額部、顔面頬部、下顎部の計6箇所で行った。結紮後1, 2, 4, 8日目に閾値の測定を行った。結紮側では非結紮側にくらべ、すべての計測日で逃避反応閾値が優位に低下しており、特に4日目にその差が大きかった。そこで、今年度は、ラット大槽内にChristophらが用いたin vivoにおける方法(2006)に従ってsiRNAを注入してTRPV1 receptorをサイレンシングし、その後眼窩下神経結紮ラットの逃避反応閾値を測定した。結紮4日後にsiRNA(VsiR2,5'-GUUCGUGACAAGCAUGUACTT-3',3'-TTCAAG CACUG UUC GU ACAUG-5')をトランスフェクションし、その後7日間閾値の測定を行った。VsiR2注入により、1日目で昨年度の実験で得られた対照値にくらべ有意の閾値の上昇が見られた。この効果は5日までは対照値にくらべ有意差が見られた。すなわち、行動学的にはVsiR2が鎮痛効果を引き起こすことが明らかになった。
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