研究課題/領域番号 |
21600008
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
植田 睦美 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 研究支援員(科学研究) (30437834)
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研究分担者 |
植田 弘師 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (00145674)
松本 みさき 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 技能補佐員 (80533926)
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キーワード | 神経因性疼痛 / アロディニア / リゾボスファチジン酸 / 脊髄後根 / 脱髄 / ミエリン関連蛋白質 / 蛋白質分解系 / スプラウティング |
研究概要 |
これまでに、研究分担者の植田弘師は神経因性疼痛の原因分子としてリゾホスファジン酸(LPA)を発見した。本研究では、神経因性疼痛におけるアロディニアの分子基盤を解明するために、LPA誘発性の脱髄におけるミエリン蛋白質分解の関与とその制御機構について解析を行った。その結果、脊髄後根におけるミエリン蛋白質であるMyelin-associated glycoprotein(MAG)の蛋白質発現は、LPAの脊髄くも膜下腔内投与12時間後から3日間後において有意な発現低下を示し、7日後においても減少傾向が観察された。このMAGの発現低下はLPA_1受容体遺伝子欠損動物において消失した。一方、LPAによるMAGの発現低下は知覚神経線維のEx vivo培養実験においても観察され、この現象はカルパイン阻害薬(Calpain inhibitor XとE-64)により顕著に抑制された。また、LPAの脊髄くも膜下腔内が脊髄後根のカルパイン活性を誘導することを見出した。さらに、カルパイン阻害薬であるE-64dは、LPAによるカルパイン活性化、MAG発現低下および神経因性疼痛のいずれをも顕著に抑制した。一方、坐骨神経の部分結紮による神経因性疼痛モデルにおいても、MAGの発現低下とカルパインの活性化が観察され、E-64dはその両者に加えて神経因性疼痛を顕著に抑制することを明らかにした。完全フロイントアジュバント接種による慢性炎症により、後根神経節と脊髄後角におけるカルパイン活性化は観察されたが、後根における活性化は観察されず、E-64dによっても慢性炎症性疼痛は全く影響されなかった。以上の結果から、LPAおよび神経傷害による神経因性疼痛の誘発機構には、LPA_1受容体を介したカルパイン活性化によるミエリン蛋白質分解機構が重要な役割を果たすことが明らかになった。
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