先天性無痛無汗症(CIPA)の原因は、チロシンキナーゼ型神経成長因子受容体遺伝子NTRK1(TRKA)の機能喪失変異である。患者では、神経成長因子(NGF)依存性ニューロンであるポリモーダル受容器と交感神経節後ニューロンが欠損する。ポリモーダル受容器は、身体の内部に関するあらゆる情報をモニターする機能である「内感覚(interoception)」に重要なはたらきをする。脳は内感覚をもとに身体の恒常性を維持するが、これには交感神経による生体の調節機能が必要不可欠である。CIPAの分子病態は、NGF依存性ニューロンが、脳と身体を結ぶ神経ネットワークを形成し、生体の恒常性を維持するために重要な役割をはたすことを示す。
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