研究課題
モルヒネの慢性投与により鎮痛耐性や精神的・身体的依存が形成されるが、がん患者の疼痛治療目的でモルヒネを使用する限り、それらはほとんど生じないことが臨床上明らかにされている。平成21年度の研究で、モルヒネ鎮痛耐性および身体的依存形成に及ぼす炎症性疼痛の影響について検討を行ったところ、ホルマリン疼痛下においてモルヒネ鎮痛耐性および身体的依存の指標となるナロキソン誘発体重減少や下痢が抑制されることを明らかにした。そこで、平成22年度はこれらの抑制メカニズムについて解明を試みたところ以下の結果が得られた。1. ホルマリン疼痛下で認められるモルヒネ鎮痛耐性形成の抑制は、一酸化窒素のプレカーサーであるL-アルギニン(100および300mg/kg)をモルヒネ反復投与ごとの20分前に腹腔内投与することにより有意に減弱されたが、D-アルギニン(300mg/kg)によっては影響されなかった。2. モルヒネ依存マウスにナロキソンを投与した際に誘発される体重減少および下痢は、ホルマリン疼痛下で抑制されるが、この抑制もL-アルギニン(30mg/kg)によって有意に減弱されたが、D-アルギニン(30mg/kg)によっては影響されなかった。以上の結果から、ホルマリン疼痛下におけるモルヒネ鎮痛耐性および身体的依存の抑制機構として、いずれも一酸化窒素の産生低下が関与している可能性が示唆された。
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Neuropeptides
巻: 44 ページ: 279-283
doi:10.1016/j.npep.2010.02.001
http://www.tohoku-pharm.ac.jp/laboratory/yakuri/index.html