Endomorphin-1(EM-1)およびendomorphin-2(EM-2)を産生する可能性のある遺伝子断片をゲノム上に発見したことから、その遺伝子のクローニングを行った。当該遺伝子断片がPCR産物に内包される様にRT-PCRを行い、そのPCR産物(EM-1:336bp、EM-2:414bp)のシークエンス解析を行ったところ、そのシークエンスがゲノムと完全に一致したことから、当該遺伝子断片はエクソン部分であることが明らかとなった。現在、5'-race法と3'-race法を用い、当該遺伝子の完全長cDNAのクローニンングを行っている。 当該遺伝子断片に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS-ODN)をマウス脊髄髄腔内に連続投与することにより、熱侵害刺激ならびに圧刺激に対する疼痛閾値が低下することを平成21年度に発見した。そこで、AS-ODN連続投与後の脊髄における当該遺伝子断片の発現量を、RT-PCR法で測定した。 その結果、AS-ODN連続投与により当該遺伝子断片の発現量は減少したことから、当該遺伝子断片の発現量の低下と疼痛閾値の低下は相関し、当該遺伝子は疼痛に関連する遺伝子であることが明らかとなった。 難治性疼痛の一種である神経障害性疼痛(坐骨神経部分結紮モデル)においては、morphineの脊髄鎮痛効力は著しく減弱する。そこでEM-1およびEM-2の脊髄髄腔内投与による鎮痛効力を、同神経障害性疼痛モデルにおいて評価した結果、morphineとは異なり、EM-1およびEM-2は神経障害性疼痛に対しても有効であることが明らかになった。 神経障害性疼痛(坐骨神経部分結紮モデル)下における、当該遺伝子断片の発現量の変化を、RT-PCR法で測定した。その結果、当該遺伝子断片の脊髄における発現量は、神経障害性疼痛下においては低下し、この発現低下が神経障害性疼痛(疼痛閾値の低下)の形成に関与している可能性が明らかとなった。
|