研究課題
神経障害性疼痛は神経を含む組織損傷後、傷が治癒した後にも長期にわたり持続する激痛である。その発生機序に大きな役割を担うと考えられる脊髄後角内の神経可塑性を伴う感覚情報伝達系の機能異常に焦点を絞り研究を遂行している。神経障害性疼痛維持機構にはニューロンだけでなくミクログリアも関与するが、神経前駆細胞が関与しているかは不明であった。nestinは幼若ニューロンに発現するクラスIVの中間径フィラメントタンパク質である。そのnestinは脊髄損傷や脳障害で増加する。神経損傷に対する神経前駆細胞の応答を明らかにするために、その指標としてnestinに注目し、nestinのプロモーターによりGFP(pNestin-GFP)が発現するトランスジェニックマウスを用い、L5脊髄神経切断による神経因性疼痛モデルを作製して調べた。神経因性疼痛モデルの脊髄後角においても、Nestinが患側に発現し、細胞増殖の指標である5-bromodeoxyuridine処置でも患側に多く陽性細胞が存在する事を明らかにした。nestinがアストログリアの指標のGFAPやニューロンの指標のNeuNと共局在する細胞も発見した。プリン作動性P2X受容体の作動薬であるα,β-MeATPにより脊髄後角のnestin発現細胞の細胞内カルシウム濃度上昇が惹起される事を確認した。また分散培養した後根神経節ニューロンにATPを投与するとnestin陽性ニューロンが増加し、末梢神経損傷による脊髄後角での幼弱ニューロンマーカーのnestin発現増加にはATPが関与している可能性を明らかにした。pNestin-GFPトランスジェニックマウスを用いたこれらの結果は、nestin陽性細胞は末梢神経損傷に応答して脊髄後角で増殖し、ATPがnestinの発現と神経損傷後の神経前駆細胞の活性化に関与している事を示唆する。
すべて 2011
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Glia
巻: 59 ページ: 208-218
DOI10.1002/glia.21090
脊椎脊髄ジャーナル
巻: 24 ページ: 341-347