前年度の研究成果をまとめ、裏面に記入した英文雑誌に掲載した。 引き続き研究を行い、以下の結果を得た。 L5脊髄神経結紮(L5 SPNL)モデル作成後、3日目から7日間GDNFをくも膜下投与したところ、一旦生じた知覚過敏の内、mechano allodyniaが完全に、thermal hyperalgesiaが部分的にリバースされた。これらのラットにおいては、過去にモデル作成と同時にGDNF投与を開始したのと同じく、L5 DRGにおけるATF3の誘導や、Nav mRNAの発現の変化がリバースされており、GDNFがより臨床に近い状況(症状が出てから投与を始める)でも有効であることが示唆された。しかし、これらの変化ではなぜ鎮痛作用があるのかが不明であるため、更に検索を行ったところ、axotomyされたL5 DRGの大型ニューロンにおいて、重要な神経ペプチドであるGDNF、NPY、substance Pの増加が抑制されていることが分かった。これら大型ニューロンは下肢からの触覚、深部感覚の中継核であるgracile nucleusに投射しているが、当該核においてNPY免疫陽性線維が著明に増加し、GDNF投与がそれをリバースしていることが分かった。BDNFについては信頼できる抗体がなかった。NPYのY1 receptor antagonistやBDNFを吸収するTrkB-fcをgracile nucleusに直接bolus投与すると、一時的にmechano allodyniaがリバースされることから、新しいGDNFの鎮痛作用メカニズムが解明できた。現在英文雑誌に投稿すべく、執筆中である。
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