平成21年度は、ラット脊髄の培養細胞を用いて、GABAからグリシン、グリシンからGABAへの伝達物質のスイッチングの程度から、小胞体型GABA輸送体(VIAAT)とGABA合成酵素(GAD)の共役の機序について検討を行った。胎児ラットから脊髄培養細胞を作製し、シナプス前細胞およびシナプス後細胞にホールセルパッチ記録法を適用して、保持電位-70mVでシナプス前細胞の刺激により誘発される抑制性シナプス後電流IPSCを記録した。ほとんどの細胞において、IPSCはGABA受容体拮抗薬であるSR-95531で部分的に抑制され、残りの成分はグリシン受容体拮抗薬のストリキニーネで完全に抑制されたことから、GABAとグリシンが共放出されていることがわかった。次に、シナプス前細胞内にグリシンを投与すると、濃度依存的に、放出されるグリシン量が増加した。この結果はシナプス前細胞にGABAを加えた場合も同様であった。しかし、グリシン80mM+GABA20mMの混合液を電極内液とすると、グリシンの放出が見られなくなった。これらの結果は、グリシンに比べ、神経終末部内のGABA濃度は著明に低いことを示唆する。一方、低濃度のグルタミン酸を加えると、グリシンの放出量が著明に減少したことから、抑制性神経終末部内ではGADとVIAATが共役していることがわかった。しかし、通常の分散培養で抑制性シナプスのペアとなっている細胞を見つけることは非常に確率が悪く、実験の効率が悪かった。そこで、現在、VIAATを有する細胞にVENUSが発現しているマウスとGADを発現している細胞にGFPが発現しているマウスを導入し、培養条件の検討を行っているところである。
|