研究課題
慢性疼痛時に神経回路の活動が上昇するが、その際にGABAおよびグリシンの共放出がどのよう制御されるか、そのメカニズムの解明を目的に、GABA・グリシン共放出の機序解明を行っている。これまでは野生型ラットから作成した培養細胞を用いたので実験の効率が悪かった。そこで平成22年度は、まず小胞体型抑制性アミノ酸輸送体(VIAAT)を有する細胞にVenusが発現したVIAAT-Venusラットを導入して培養細胞を作成した。しかし、培養細胞における蛍光が弱く、神経線維を明確に可視化できなかった。そこで、VIAAT-Venusマウスを導入して培養細胞を作成すると、神経線維を可視化するのに十分な蛍光を発していることがわかった。ところが、マウス脊髄分散培養細胞の作成は失敗することが多かったので、培養条件を検討したところ胎生14日目に培養すると培養細胞の状態が良いことが判明した。マウス海馬から作製した培養細胞で、シナプス前細胞およびシナプス後細胞にホールセルパッチ記録法を適用して、抑制性シナプス後電流IPSCを記録したところ、すべての細胞において、IPSCはGABAのみが放出されていることにより生じていることがわかった。シナプス前細胞内にグリシンを投与すると、濃度依存的に、GABA作動性IPSCからグリシン作動性IPSCに変化した。従って、IPSCでは、細胞内のグリシンとGABAの濃度に依存して放出される伝達物質の種類が変化することがわかった。また、単一終末部刺激法を用いることで、神経終末部ごとに含まれるグリシンとGABAの割合が異なることも示唆された。なお、これらの結果は抑制性シナプスの後膜にはグリシン受容体が存在することを示しており、現在グリシン受容体のシナプス直下への移動様式の制御機構についても検討を行っている。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
British Journal of Pharmacology
巻: 162 ページ: 1326-1339
Brain Research
巻: 1345 ページ: 19-27