研究概要 |
脱分極が波のように大脳半球全般に広がるSpreading depression(SD)現象はその伝播速度が片頭痛の前兆で現れる閃輝暗点と一致することなどから片頭痛のモデルとしてよく使われている。我々は片頭痛発作に伴う痛みの伝達回路を明らかにし、痛みの客観的な評価系を確立目的で、SDをラットの大脳皮質に片側性に引き起こし、FDG-PETイメージングとSPM解析法を組み合わせて脳内の賦活領域を検討した。結果、これらの動物においてSD刺激後、同側の三叉神経尾側核および隣接の外側網様核、対側の視床の腹内側核、腹外側核、島皮質等、片頭痛の疼痛伝達に関わる領域の神経活動が亢進していることを明らかにした。またSPM解析では三叉神経尾側核において統計学的に優位な神経活動の上昇が観察され、片頭痛の客観的な評価に三叉神経尾側核での神経活動を用いた。これらの評価系を用いて片頭痛の頓挫薬の効果を検討したところ、片頭痛の頓挫薬としてよくつかわれているスマトリプタンは三叉神経尾側核での神経活動を抑制する効果を示さなかった。また、スマトリプタンの前投与群では大脳皮質の感覚野、後部帯状回,腹側海馬の一部において神経活動の亢進が観察された。スマトリプタンは三叉神経終末での炎症性ペプチドの遊離を抑制することから、今後、脳内の炎症反応におけるスマトリプタンの作用も合わせて検討し、片頭痛の疼痛伝達、認知におけるスマトリプタンの薬理作用を明らかにする予定である。
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