研究課題
片頭痛の疼痛形成・伝達機序に関して、発作時の血管拡張による血漿タンパク質などの漏出が無菌性炎症(neurogenic inflammation)を引き起こし、これらの炎症反応情報が三叉神経系を介して感覚中枢に伝達され、痛みとして認知されるという「三叉神経血管説」が提唱されている。一方、脱分極が波のように大脳半球全般に広がるSpreading depression (SD)現象はその伝播速度が片頭痛の前兆で現れる閃輝暗点と一致することなどから片頭痛のモデルとしてよく使われている。我々はラットの大脳半球に片側性のSDを引き起こし、片頭痛の疼痛伝達回路や脳内炎症についてPETイメージングで検討してきた。既に大脳皮質の片側性のSD刺激によって、脳の炎症反応の中核をなすマイクログリアが同側の大脳皮質において広域に活性化すること、同側の三叉神経尾側核および隣接の外側網様核、対側の視床の腹内側核、腹外側核、島皮質等、片頭痛の疼痛伝達に関わる領域の神経活動が亢進していることを明らかにした。今年度は片頭痛の頓挫薬としてよくつかわれているスマトリプタンや免疫抑制剤であるFK506を用いてSD刺激による脳内炎症への影響について[^<11>C]PK11195-PETで検討した。結果、SD刺激後FK506の連日投与ではマイクログリアの活性化が抑制されるのに対し、1mg/kgのスマトリプタンの前投与ではマイクログリアの活性化には変化が見られなかった。スマトリプタンの前投与により三叉神経尾側核における神経活動が抑制されないことや大脳皮質の感覚野、後部帯状回,腹側海馬の一部において神経活動が亢進することと考え合わせると本実験条件ではスマトリプタンが鎮痛効果を示さないことを示唆している。今後、スマトリプタンの有効用量を検討し、疼痛認知領域の神経活動との相関を解析していく予定である。
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Bioorganic & Medicinal Chemistry
巻: 19 ページ: 249-255
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