「ナトリウムチャネルのE3領域をターゲットにしたペプチド系鎮痛剤の開発」は、ナトリウムチャネル阻害ペプチドSKTXの誘導体ライブラリーを、哺乳類ナトリウムチャネル1.3(Nav1.3)の3番目の細胞外領域(E3領域)への結合を指標としてスクリーニングし、Nav1.3の活性を特異的に阻害するSKTXペプチド誘導体を開発することを目的とするものである。 本研究は、(1)ナトリウムチャネルE3領域の発現及び精製(2)SKTXの誘導体ライブラリーの作製(3)Nav1.2及びNav1.3を発現するHEK293細胞の樹立(4)誘導体ライブラリーからのナトリウムチャネル結合ペプチドの選択(5)選択されたSKTXの誘導体の電気生理学的な方法による活性の検討、(6)実験動物を使用した生理活性の検討、以上の6段階に分けて行う予定だった。 平成23年度は、SKTXの誘導体ライブラリーより選択した5種類のクローンがコードするペプチドを組換え体として発現させた。さらに組換えペプチドのナトリウムチャネルE3領域への結合活性を測定した。 (組換え体ペプチドの発現)5種類のペプチドを6×HisとGSTとの融合ペプチドとして、可溶化した状態で大腸菌体内に発現させた。しかしながら、組換え体は大腸菌体内で可溶化した状態では分解したため、インクルージョン・ボディとして発現させ、リフォールディング操作を行った。インクルージョンボディーの可溶化及びリフォールディングには、アルカリ性緩衝液を用いる方法と6M尿素を用いる方法を用いた。後者の方法はペプチドがリフォールディングせず、凝集したため、前者の方法を用いて組換え体ペプチドをリフォールディングさせ、精製した。 (結合活性の測定)ナトリウムチャネルE3領域を用いたプルダウンアッセイの予備的な実験結果より、5種類のペプチドの中でも、我々がAタイプ、Bタイプと名付けたものが、結合活性が強いと考えられた。そこで、この2種類のペプチドに絞り込んでBIAcoreによる解析を行った。 BIAcoreを用いて組換え体ペプチドのナトリウムチャネルE3領域に対する結合活性を測定したところ、マイクロモルオーダーのペプチドを加えた場合には、センサーグラムの乱れはあるものの、AタイプとBタイプともに、ナトリウムチャネルE3領域へ結合することが示された。マイクロモルオーダーの結合定数は、それほど相互作用として強いものではない。BIAcoreの測定条件等に問題点がある可能性もあり、今後、最適な測定条件を決定したいと考えている。
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