4Kの超高精細映像機器を用いた全天映像システムを開発し、皆既日食を太陽だけでなく、周囲のすべての風景ともに撮影・収録(条件がそろえば、伝送)し、プラネタリウムのドームスクリーンで投影することで、皆既日食という宇宙での現象を、月の影が地上を駆け抜ける地上の現象としても理解できるか実験を行ってきた。1年目の平成21年には、奄美大島で起こった皆既日食を全国4箇所のドームスクリーンに伝送・投影し、これまで皆既日食の起こっている現場でしか体験できなかった地上の現象を遠隔地のプラネタリウム内で体験することに成功した。しかし、当日は薄曇りのため、月の影を感じることができたものの、従来の皆既日食コンテンツの花形である太陽コロナを撮影・投影することができなかった。そこで、2年目の平成22年は、7月11日に南太平洋で起こった皆既日食をフランス領ポリネシアのハオ環礁で観測し、撮影・収録した。ここでは、国外に超高精細映像を伝送するだけの回線がなかったために生中継は実施しなかった。課題であった太陽コロナは、雲量が増えたために皆既中を通して見ることはできなかったが数十秒間、雲の切れ間から撮影することに成功した。現在、この映像を学内の3mドームを使って投影実験を行っているが、一度に数人しか入れず評価実験には不向きである。5mのドーム径を持つスクリーンが平成23年夏に学内に常設されるため、3年目は2回の日食映像をはじめとするこれまでに撮りためた全天映像を多くの被験者に見てもらい評価を行いたい。
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