大学附属植物園の樹林型を利用して、森の役割を明らかにするとともに、植物園発の環境教育プログラムを開発し、地元交野市との協力による「交野環境講座」として5回実施した。 1. 11樹林型の過去30年分の樹木成長量データベースを作成し、現地再調査を行って、枯死木、新規導入木等の再計測を行った。さらに胸高直径と樹高から樹体炭素蓄積量を推定するためのアロメトリ関数を作成するためサンプル木(初年度4本)の伐倒調査を行い、葉・枝・幹分離とそれぞれの関数化を行った。 2. 1950年の植物園開設からから現在までの植物園と大阪市内の気温を比較すると、どちらも最高気温が約1℃、最低気温が約2℃上昇していた。ただし日最低気温の月平均値は植物園が大阪市内より3~4℃低くヒートアイランド現象を免れていると推察された。 3. 環境教育プログラムのタイトルと内容例を示す。 「スパイダーウォッチング」ではクモが生息できる自然環境を学んだ。キシノウエトタテグモやカトウツケオグモなどの希少種を含む49種が観察された。子どもはクモや虫に対しても先入観なしに接しており、幼少期に自然体験の機会を持つことは重要と言える。 「森に秘められたチカラ」では樹木によるCO_2固定を理解するため、手作り樹高計による樹高測定などから樹木の生長を実感した。また光合成測定装置を用いて様々な葉のCO2吸収を測定し、人が放出するCO_2量と比較することで森の役割を具体的なものとして提示した。 これらの他、「徘徊性昆虫類調査」では甲虫類11種が採集された。「鳥の観察会」では野鳥44種、オオタカ、ミゾゴイなど猛禽類や絶滅危惧種の飛来も確認され、食物生態系の上からも生物層の厚さが伺えた。これらのプログラムに参加した親子からは日頃経験することの出来ない自然とのふれあいの機会をもっと持ちたいなどの感想が寄せられた。
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