日本の11樹林型を再現展示している大阪市大理学部附属植物園をフィールドとした研究と活動の実績は以下の通りである。 1. 異なる樹林におけるCO_2固定能の評価:園内の2つの常緑樹林の樹木炭素蓄積量は2つの落葉樹林のそれに比べ2~5倍と大きな差が認められた。個々の個体成長速度には常緑-落葉間で大きな差異が認められず、枯死個体のサイズ分布に差異が認められた。今後は樹林によりこのような差異が生じた経緯の解明を試みる。 2. 植物園の鳥の多様性と特徴:園内は落葉樹林、常緑樹林、混交樹林、針葉樹林、河岸林からなる。2010年1~12月に実施した18回の調査での延べ出現種数・個体数ともに混交林と河岸林で多く、これらの森は動物性ならびに植物性の餌が豊富で、生物多様性を支える森であることが示された。また種数・個体数の季節変化から植物園が渡りの中継地として重要であることが示された。暗い針葉樹林では鳥がほとんど観察されなかったのに対し、メタセコイア、ヒマラヤスギ、ヌマスギなどの明るい針葉樹林でカラ類などが採餌していた。平地の植物園としては特異な現象で、人為的なコレクションの森が多様な鳥を擁していると考えられた。 3. 環境教育プログラムの開発・実施:交野市環境保全課と協力して観察・体験型の「環境講座」を5回、都市と森の共生をめざす研究会(代表:植松)と協力して野鳥観察会などの「森の教室」を3回実施した。
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