1.植物園の樹林におけるCO_2固定能の評価:園内の広葉樹を伐倒調査した結果、後藤ら(2003)のアロメトリー式を適用できる事が明らかになった。その結果、同一環境条件下とみなせる園内の常緑ならびに落葉樹林でも、林木炭素蓄積速度は立木密度や枯死樹木損失量の影響を受け、林分間や年度間で大きな差を生じていた。25.5haの敷地の内、樹林造成エリア(一部自生木を含む)の胸高直径5cm以上の7388本について毎木調査し、総計約1050tの炭素を蓄積していると推定した。森の植物園の樹木が蓄積している総炭素量が算出された意義は大きく、環境教育プログラムの中で、森の働きを考えるきっかけになると期待する。 2.植物園の温度環境:植物園を含む私市地区の夏季夜温が大阪市内より低いのは、園及び周辺の生駒山地から天野川に流入する冷気流によることが、定点ならびに移動観測で明らかになった。 3.生物多様性の調査:園内で111種のクモが確認され、キシノウエトタテグモ、カトウツケオグモ等の稀少種が含まれていた。また35回、のべ404名による鳥類のラインセンサス調査では出現種数と個体数が河岸林、開平地で多く、暗い森で少なかった。メジロ・シジュウカラなどの山地性野鳥が優先したが、天野川由来の平地性の野鳥も観察された。冬鳥には餌の種類と量が豊富で優れた越冬場所だった。野鳥の出現は餌となる花、実、種子、昆虫、クモ、それらの卵、ミミズ等の有無に依存しており、草刈りの時期や頻度の影響が大きかった。 4.環境教育プログラムの開発:「交野環境講座」や「森の教室」など年間10回程度の市民向けプログラムを開発・実施した。市民参加による伐倒調査やクモの調査の他、基礎研究の成果を市民に還元する内容で、本研究が目的としたプログラムが実施できたと考える。
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