本プロジェクトでは、台湾原住民に関する画像・映像資料に関する研究を行った。日本植民地時代に撮影され、保存されてきた研究者たちによる写真をは貴重な民族誌資料である。本研究ではこれらの写真について、現地調査によって民族や人物、場所などに関する鑑定を進め、データベース上のキャプションの正誤を検討した。また、台湾と日本の各地の研究所や大学にばらばらに保管されている写真を機関横断的に関連付ける作業を行い、過去の台湾原住民に関する情報を整理するとともに、実際に文化人類学的な研究の中でこれらの写真を利用した。また、その過程で、植民地時代以降の比較的新しい研究者が撮影した写真についても、ある程度その存在や行方を確認することができた。このほか、文化人類学者の故鈴木満男が遺した1970年代の台湾原住民及び漢民族に関する写真を、夫人から寄贈され、電子化して整理したことが、本研究の特筆すべき一つの成果であった。カメラが幅広く普及した時代以後に研究者が撮影した個人所有のスナップ写真の数は膨大なものとなっており、それであるがゆえに、死後家族によって簡単に処分される可能性も高くなっている。個人の研究者の写真を散逸させないように整理保存することは、資料の文化的価値から見ても非常に重要である。本研究は、こうした資料の一部を保存することに成功し、また研究機関ごとにばらばらに保存されていた写真を、研究のための資料として相互に関連付けながら利用することができた。台湾研究者の撮影した写真の場合、今後は台湾の大学に寄贈される例も少なくないと思われる。その際には、その資料に関する鑑定とキャプションの確認が必要となる。こうした国際的な資料の交換と利用の場面においても本研究の成果と実績及び今後の研究の方向性は重要な意義を持っている。
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