今年度は主としてセネガルのダカールで行われたダカール・ビエンナーレを調査した。ダカール・ビエンナーレはすでに9回目を迎えて、ますます内容を充実させてきている。今回は主会場のアフリカ美術館で若手アーティストに焦点を当てた「展望」展と同ビエンナーレの過去8回の歩みを各回のグランプリ受賞者の作品によって示す「回顧」展が行われ、また、第2会場のギャルリー・ナショナル・ダールではハイチの4人のアーティストが紹介された。一方、自由参加による「OFF展」として、フランスやナイジェリアなどによる国別展示、さらに個別のアーティストたちの展示など、併せて全部で150近い企画が市内各所やゴレ島で展開されていた。世界でただひとつ、アフリカの同時代美術に焦点を絞った催しとして独自性を示している同ビエンナーレが、いまや単に美術の祭典であるのみならず、セネガルという国の存在そのものを象徴する重要な政治的イヴェントになっていることをあらためて確認することができた。その成果は、「彫刻家エル・アナツイのアフリカ」展とその図録、および『アフリカの同時代美術』(明石書店)に発表した。 このほか、ベルリン、ロンドン、エジンバラ、パリで、近現代美術と文化の展示に関する調査を行った。これらの諸都市ではこの十年、美術館、博物館の整備、新設が進められている。近現代美術のなかでアフリカが、そして異文化としてのアフリカが、展示を通してどのように語られているかを調査した。この調査は次年度以降も一部場所を変えて続行し、最終的な成果につなげる予定である。
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