研究課題
本研究の目的は、自然史科学的な地域資源としての箱根火山噴出物、それが歴史的に城郭建造に利用されて日本史の重要な事件に関わっていることを、総合的に理解するプログラムの開発である。初年度は、豊臣秀吉と徳川家康が小田原城攻略のために建造した石垣山のいわゆる一夜城の遺構と、石垣に用いられた石材を産出した早川丁場群の調査を行った。石丁場は広域農道の整備中に発見されたもので、現在も発掘調査が継続されているが、岩石は箱根火山を構成する安山岩類を主とするものである。残存する石材には何種類かの刻印が確認され、芦ノ湖を水源とする早川を利用して河口まで運搬され、さらに相模湾を経由して、江戸城の建造に用いられたと考えられている。城郭石材について比較するために、濃美地震や伊勢湾台風の被害を受けながらも、天守閣を中心に修復され残存している国宝犬山城の調査を行った。そこで用いられている石材は、主として周辺のジュラ紀付加体中のチャートであったが、他に河川で運ばれた石英斑岩などの岩塊もふくまれており、大小様々の石材が用いられていた。それに比して、石垣山の一夜城ではやはり周辺の岩石が利用されたとはいえ、岩種は箱根火山噴出物のなかで堅固な安山岩溶岩であり、石材としてのサイズがそろっている傾向が認められた。石材正面が1m弱の大きさで、長さは2mをこす直方体のものが多く、他に立方体に近いものも認められた。おそらく西日本における城郭建造の経験をもとにして、この地では石材を規格化するという城郭建造の技術革新があったと考えられる。今回は、博物館からスタートし、早川沿いの石丁場群を観察して石垣山の城郭遺構にいたる、自然史と歴史の体験コースの設定を試みた。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (6件)
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) 39
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