研究課題
本研究の目的は、自然史科学的な地域資源である箱根火山噴出物、それが歴史的に城郭建造に利用されて日本史の重要な事件に関わっていることを、とくに子ども達が総合的に学べるプログラムを開発することである。2年目にあたる本年度は、現在も本小松石等の石材名で知られる真鶴半島の安山岩類について調査を行った。この地域では、江戸城の用石確保のため黒田長政の命を受けて、小河織部正良が岩小松山に良質の石材を見いだして右丁場を開拓して以来、現在まで地場産業を支える柱のひとつである石材業が続けられている。その始まりは平安時代末から鎌倉時代にさかのぼり、土屋格衛により石材業が営まれたとされる。これら古くからの石工の業績をたたえて、江戸時代には石工先祖の碑が真鶴町に建てられており、真鶴における石材採石の歴史や経緯が刻まれていまでも残されている。かつての碑は地震災害で壊れたため、現在のものは安政6年に再建されたと伝えられている。本地域には当時の高度な石材技術を示す資料が残されており、ひとつの石から塔身が切り出された龍門寺山門にある五層塔や頌徳碑等はその例である。これら石材の岩石学的性質も自然誌の理解に必要であり、本年度3月に開催された静岡県考古学会2010年度シンポジウム「江戸の石を切る-石丁場遺跡から見る日本の近世社会-で、山下浩之が一部考察を試みた。一方、火山噴出物がつくり出した地形も重要な側面をもっている。それは真鶴半島め北側に位置する真鶴港の存在であり、そこは江戸城を築くときに多量の石材を積み出した海運のための天然の良港として利用された。石材採石の石丁場から、当時の人足による石材運搬路をたどって、真鶴港までいたるコースは、自然史と歴史を体感できるジオサイトめ設定が可能である。
すべて 2011 2010
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地学教育
巻: 64 ページ: 1-12
静岡県考古学会2010年度シンポジウム 江戸の石を切る-石丁場遺跡から見る日本の近世社会-資料集
ページ: 3-10
地学雑誌
巻: 119 ページ: 911-916
博物館研究
巻: 45 ページ: 4-5
巻: 119 ページ: 1125-1160
巻: 63 ページ: 163-179