研究課題
本研究の目的は、自然史資源が歴史に深く関わっていることを、地域の子ども達が総合的に学べるプログラムを開発することである。箱根火山の安山岩溶岩は石材に広く用いられ現在まで地場産業を支える柱の一つであるが、その始まりは平安時代末から鎌倉時代の土屋格衛によるとされる。石材として築城に用いられたのは、天下統一を狙った豊臣秀吉が北條氏の小田原城攻略にあたって、東日本最初の総石垣の城・石垣山一夜城を構築からである。小田原攻めの功績で関東一円の領土を与えられた徳川家康は、征夷大将軍となって江戸城改築にあたったが、一夜城の経験をもとに各大名に城郭石材の確保を命じた。その結果、この地で広く石材産地が開拓され、膨大な量の石材が小田原城や江戸城などの城郭建造に使われ、現在まで残されている。こうした歴史を反映した当時の石丁場遺跡を、小田原の早川沿いから、根府川や本小松や真鶴、さらに東伊豆の網代、宇佐見、伊東まで調査を行い、火山岩石学的・地球化学的データを作成した。こうした石丁場の歴史的遺跡を観察できる野外ルートを設定し、岩石の産状と石質とあわせて歴史の理解に役立つ学習プログラムの開発を試みた。石材には硬くて風化に強い岩石学的性質が利用されたわけであるが、火山噴出物がつくり出した地形も大きな役割を果たしており、箱根火山自体も当時の幹線・東海道における重要な関所として機能した。真鶴半島北側の真鶴港のような地形も重要で、そこは多量の石材を積み出した海運のための天然の良港として利用された。石材採石の石丁場から、当時の人足による石材運搬路をたどって港までいたる観察ルートは、自然史と歴史を体感する学習に適する例の一つである。地域地質・地域地形・地域地理は、歴史と組み合わせることによって、学校教育や生涯学習により有効に活用できる自然資源となる。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
神奈川立博物館調査研究報告(自然)
巻: 14 ページ: 11-24
神奈川県立博物館調査研究報告
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神奈川県立博物館調査研究報告(自然)
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地学雑誌
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静岡県考古学会2010年度シンポジウム資料「江戸の石を切る」-石丁場遺跡から見る日本の近世社会-、静岡県考古学会
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地図
巻: 49 ページ: 28-37
学術の動向
巻: 12 ページ: 56-59