本研究は博物館施設に収蔵されている漁労用具や製塩用具などの資料が塩分や塩分に起因する錆によって受ける影響について科学的に明らかにし、その対処法について博物館施設で行える方法論を構築するものである。21年度に引き続き、民俗資料の塩分による劣化のメカニズムを探るために、劣化状況の観察を行い、木部への塩分含有量を測定した。 21年度に引き続き、塩分を多く含む履歴を持つ民俗資料の調査を行った。調査地は、赤穂市立民俗資料館、四国民家博物館、野崎家塩業資料館である。調査した資料のうち、塩分を含む工程において使用されていたものは、塩分に起因すると思われる劣化を引き起こしていることが観察された。このうち、四国民家博物館に所蔵されている資料を拝借し、脱塩実験を行った。塩分現在、脱塩実験の進行中である。23年度に、イオンクロマトグラフィーによって塩化物イオンを測定し、資料に含まれる塩分量を推定する予定である。 また、木材サンプルを用いて、木材が塩分を吸収しやすい状態を検証した。スギとヒノキのサンプルを用意し、飽和食塩水に浸漬した。このサンプルを細かく砕き、るつぼで燃焼させた後、塩分量の測定を行った。 金属への影響を検証するため、塩分を噴霧する装置を作製した。この実験に使用する金属板は、21年度に行った金属腐食実験を受け、結果が顕著であった鉄と銅のみとした。鉄と銅の板を研磨した後、民俗資料防錆に用いられている油や合成樹脂を塗布し、塩水噴霧機で腐食実験を行うが、具体ていな実験と結果の検証は23年度に行う予定である。
|