研究課題
細胞内でのタンパク質等の発現量にはゆらぎがあるために、細胞はそれ自身ゆらいでいる上に、周りの環境もゆらいでいる。本研究課題は、初期発生におけるゆらぎを緩和する機構を調べるため、初期発生の良いモデル系であるES細胞などを使用し、1細胞で培養、観察しながら様々な変化を与え、細胞の応答を測定するシステムの開発が主眼である。まず、無血清培養で正しく分化、未分化が制御されている事を確かめるために、免疫組織染色とフローサイトメトリ計測をし、分化培地に交換後2~4日で分化することを確認した。また、Eカドヘリンコートによる単層培養法でも同様の結果が得られた。以上の事から、我々の無血清培養系と、平面培養法を用いた一細胞観察系でも、正しく未分化・分化が制御できている事が確認された。この系を用いて単1のES細胞の顕微鏡で微速度撮影し、1つの細胞がどのように分裂していくかを未分化維持・分化誘導培地の2条件で観察し、系統樹を作成した。この系統樹より、細胞が一様に分裂していくわけではなく、ゆらぎが大きいことが分かった。更に統計的な解析をするために、同じ細胞から分裂した2つの細胞のペアに関して、生死と次に分裂するまでの時間を比較した。その結果、未分化維持している場合と、分化誘導した時に違いがある事が確認された。また、ヒトiPSやES細胞を用いて同様の解析をするシステムも準備している。以上のように、ES細胞を1細胞で培養、観察しながら様々な変化を与え、細胞の応答を測定するシステムの開発に成功し、それを用いて細胞のゆらぎを捉えることにも成功した。今後の研究により、初期発生の安定性に関する重要な知見が得られると期待される。
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