本研究では、平成22年度において、in vivo蛍光イメージング装置およびpositron emission tomography (PET)を用いて、神経幹細胞の成体サル脳内における動態をin vivoで可視化するための神経幹細胞特異的な標識技術の開発を行った。ここでは、神経幹細胞特異的に賦活されるCD133プロモーターを、カニクイザルBACライブラリーよりクローニングし、その下流に緑色蛍光タンパク質(EGFP)、あるいは中性アミノ酸トランスポーター遺伝子を挿入したレンチウィルスベクターを構築することで、感染神経幹細胞において特異的にそれらタンパク質を発現するレンチウィルスを調製した。それを、ラット胎仔海馬歯状回より初代培養した神経幹細胞に感染させ、当該神経幹細胞を生体ラット脳室下帯に移植した後に、in vivo蛍光イメージング装置およびpositron emission tomography (PET)を用いて、生体脳内における移植神経幹細胞の増殖・遊走をin vivoで検出画像化することを行った。ここでは、加えて、神経幹細胞を移植後にosmotic pumpにより、既知の神経幹細胞増殖因子であるEGFとbFGFを、神経幹細胞の移植に引き続き脳室下帯に継時投与し、その増殖と遊走をin vivo蛍光イメージング装置を用いて生体脳で経時的に観察した。その結果、EGFとbFGFに応答性に移植神経幹細胞が増殖するとともに、神経幹細胞が非移植側の大脳半球にまで移動することが確認された。23年度では、成体脳で神経新生に携わる内因性の神経幹細胞の動態を、in vivo蛍光イメージング装置及びPETによりin vivoで可視化する技術の開発を行うことを予定している。
|