造血幹細胞(HSC)は古くから多くの研究が行われ、現在では造血組織の再生医療(骨髄移植)に利用されている。しかしながら、移植に使用されている細胞は実際には幹細胞を含む多種多様な細胞群であり、いまだヒトHSC本体の詳細は明らかにされていない。又、移植時のHSCと骨髄ニッチ環境との細胞間相互作用のメカニズムについてもほとんどわかっていない。ホーミングやニッチでの細胞接着メカニズムの主要因子としてCXCL12(SDF-1)とその受容体であるCXCR4の関与が報告されているが、細胞遊走をin vitroで再現したトランスウェル遊走試験においてSDF-1以外にも遊走誘導因子が存在する事などから、SDF-1-CXCR4以外のホーミングシグナルの存在が示唆されている。本研究では新しいホーミング関連因子候補としてCXCR4と同様の7回膜貫通G蛋白質共役型受容体(GPCR)、特に細胞接着因子でもあるTM7XN1に着目した。前年度の研究計画においてはTM7XN1を中心に解析する予定だったが現在使用中の抗TM7XN1抗体の大量入手が困難となり本年度は研究の焦点をTM7XN1を含むGPCR全般に広げている。まず試料を集めやすく均一である培養がん(幹)細胞を材料としてがん幹細胞特異的に発現しているGPCRの特定とその機能について検討を加えた。ヒト扁平上皮がん細胞株A431細胞を用い幹細胞分画と報告されているCD44+/CD24-細胞群とCD44-/CD24+or-細胞群(非がん幹細胞分画)をセルソーターにて分離、取得し標的GPCR遺伝子とインターナルコントロール(GAPDH)の発現から相対発現量の検討を行った。その結果CD44+/CD24-細胞群にのみ発現のみられる複数のGPCRを確認した。それらの中で相対発現量が10倍以上のものに関して現在解析を開始している。
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