研究概要 |
具体的内容:天然毒貯蔵生物が持つ自己耐性機構の存在を仮定し、クロイソカイメン(H.okadai)をモデルにそれを証明する研究である。平成21年度、日本各地よりH.okadaiを収集し、下痢性貝毒であるOA、および我々が見出した新規OA結合タンパク質の含有量を比較した。以下、詳細を述べる。(1)神奈川県、千葉県、福岡県で採集したH.okadai中のOA含有量が生息地域や時季によって異なることを明らかにした。(2)H.okadaiからOA結合タンパク質であるOABP2.1およびOABP2.3をクローニングし、それぞれをpET21aプラスミドベクターに組み込み、リコンビナントタンパク質(recOABP2.1,recOABP2.3)として発現させた。(3)OAは両リコンビナントタンパク質に対して同程度の結合性を示すこと、ディノフィシストキシン1もOAと同様の親和性でrecOABP2.1に結合することを明らかにした。(4)recOABP2.1を用いてウサギを免疫して抗OABP2.1血清を得た。それを用いてウェスタンブロッティングを行い、日本各地のH.okadaiに含まれるOABP2.1の含有量を比較した結果、OABP2.1含有量はOA含有量と相関関係になく、OA同様、生息地域や時季によって異なることを明らかにした。 意義:OAが相同性66%のOABP2.1とOABP2.3に対して同程度の結合性を示し、両タンパク質が共通して持つ配列上にOA結合部位があることがわかった。H.okadai中のOA含有量とOABP2含有量に相関が見られなかったことから、当初想定したH.okadai内でOABP2がOAと結合することにより耐性が生まれる機構が否定された。現在、新たな作業仮説を立て、それを証明する計画で継続している。 重要性:詳細が不明であったH.okadaiの自己耐性機構の一端が解明された。
|