研究課題
目的:クロイソカイメンという潮間帯に生息する軟体動物の体内には、人類に対して下痢原性を示すオカダ酸が含まれている。オカダ酸(OA)はリン酸化されたタンパク質を加水分解する特殊な酵素(PP1、PP2A)の阻害剤として基礎研究で頻用される試薬であるが、クロイソカイメン中での機能はわかっていない。本研究では私達がクロイソカイメン抽出液から精製しOABP1、OABP2と名付けたOA酸結合タンパク質を利用し、自然界におけるOAの機能を解明することを目的とする。結果およびその意義:(1)交付申請書に記載した計画通り、分子生物学の手法(5'Race、3'Race)を用い、OABP1の全遺伝子配列(cDNA)を決定した。続いて、このOABP1のcDNAをpET21aベクターに挿入し、BL21(DE3)と呼ばれるバクテリアの中でタンパク質として発現させた。得られたタンパク質に対して、OAが高結合性を示したため、PP2Aと高い相同性を示すOABP1がOA耐性をもたないことがわかった。(2)同様に(交付申請書に記載した計画通り)、関東地方の海岸付近でクロイソカイメン、ダイダイイソカイメンを採集し、LCMS法やウェスタンブロット法を用いて、OAおよびOABP2.1の含有量を調べた。現在、両者の相関関係を調査中である。計画にはなかったが、抗OABP2.1抗体を用いたELISA法を開発中であり、今後、EHSAによるOABP2.1の定量も実施し、研究成果の信頼性を向上させたい。さらに、OABP2がOAによる自己毒性の抑制に関与するかどうか考察を行いたい。(4)同様に、高分解能光学顕微鏡を用いてH.okadai中のOABP2.1の局在調査を目指したが、顕微鏡観察に適した試料の調製が困難であり、実現できなかった。現在、海綿組織を解離させ、各組織に対し顕微鏡観察が可能かどうか検討を行っている。
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http://www.agri.tohoku.ac.jp/bukka/index-j.html